推定誤差分散が最小になる推定方法とフィッシャー情報量
おおもとの疑問
未知の値に対して、ランダムな誤差が含まれるのを避けられない測定を何度か行い推定するとき
未知の値はどの程度正確に知ることができるのか?
その正確さを使って、測定が持っている情報量なるものを定義できないか?
正確な議論をするための定義と状況の簡略化
いま、未知の値を雑音がで表される互いに独立な正規分布に従う事がわかっている測定器で2回測定し以下の測定値を得たとする。
このとき、の線形結合をの推定値とすると、推定の誤差分散の期待値を最小にするをとったとき、その値はいくらになるか?
(実はこの問題は雑音の平均値がゼロで分散が有限なことさえ仮定すれば解けるが、あとでフィッシャー情報量を計算するために正規分布を仮定した)
計算
=
= なので
= なので
= を消去して
=
これが最小になるを求めるには、で微分して0とすればいいので
このとき
これで第一の疑問「未知の値はどの程度正確に知ることができるのか?」についての答えとして
分散の最小値を ととるようにできる。という知見を得ることができた。
情報量なる抽象的な概念をこのように、「その測定によって、どれだけ正確な推定ができるか」で定義しよう!
・・・というのがフィッシャー情報量である。
誤差分散に対して次のクラメールラオの不等式が成立することが知られている
は測定値全体をまとめたベクトル
は条件付き確率密度分布に対する期待値を取ることを意味する。
この不等式の右辺は、今回の問題のように平均値、分散などを仮定しない一般化した形をしている。
右辺の逆数がフィッシャー情報量と呼ばれる量である。
今回の問題に挙げた例を使って、実際に右辺の値を計算してみる。
(は独立)
はによらない量。あまり興味がない
同様の計算をにも行うことができる。
また、[(y-\theta )]の奇数次の期待値はゼロなので残るのは
確かにフィッシャー情報量の逆数と推定誤差分散の最小値は一致した。
このような計算を一般化して行った結果がクラメールラオの不等式を考えることができる。